「今日から毎日野菜を食べる」
「毎日スクワットする」
——そう決意しても、数日で忘れてしまった経験はないでしょうか。
これは意志が弱いからではありません。
「いつ、その行動をするか」が決まっていない目標は、日々の忙しさの中でそもそも思い出されにくいのです。
この問題に対して、行動科学の分野で効果が確認されている方法が「if-thenルール」です。

if-thenルールとは何か
if-thenルールは、心理学者ピーター・ゴルヴィツァー氏らが提唱した「実行意図(Implementation Intentions)」という考え方に基づく手法です。
考え方はとてもシンプルで、
「もし〇〇が起きたら、△△をする」
という形で、行動のきっかけ(if)と行動そのもの(then)をあらかじめセットで決めておく、というものです。
「毎日野菜を食べる」という目標は、if-thenルールにすると「もし夕食の準備を始めたら、先に野菜を1品切る」のように書き換えられます。
目標そのものは変わっていませんが、「いつやるか」が明確になることで、実行に移されやすくなることが、複数の研究で報告されています。
なぜ効果があるのか
私たちは日常の中で、無数の判断を繰り返しています。
「今、これをやるべきか」を毎回考えて決めるのは、思っている以上にエネルギーを使う作業です。
特に疲れている日や忙しい日は、この「その都度考える」というプロセス自体が、行動を先延ばしにする原因になります。
if-thenルールは、この「その都度の判断」をあらかじめ済ませておく仕組みです。
「もし〇〇が起きたら」という条件が来た瞬間に、考えるより先に身体が動く状態を作る。
いわば、意志力を使わずに済む「自動運転モード」を用意しておくイメージです。
日常生活への応用例
具体的な例を挙げてみます。
食事の場面で
- もし食事と食事の間にお腹が空いたら → ナッツを5粒だけ食べる
- もしコンビニでお昼を選ぶときは → サラダかスープを一緒にカゴに入れる
- もし飲み会で最初の一杯を頼むときは → 野菜系のおつまみも一緒に頼む
- 夕食後にお腹が空いたと感じたら → 温かいハーブティーか白湯を飲む
運動の場面で
- 帰宅したら → トレーニングウェアに着替える
- もし料理の合間に手が空いたら → スクワットを5回する
- 歯を磨き終えたら → その場でスクワットを10回行う
- テレビのCMが始まったら → プランク(体幹トレーニング)を30秒間キープする
どれも「まとまった時間」を必要としない、日常の隙間に埋め込めるルールです。
これは、以前ご紹介した「スモールステップ」の考え方とも相性が良く、if-thenルールは「いつやるか」を、スモールステップは「どれだけやるか」を小さくする、という役割分担で組み合わせることができます。
良いif-thenルールをつくる3つのコツ
新しい行動のきっかけを新しく作ろうとすると、それ自体を忘れてしまいます。歯磨き、食事の準備、着替えなど、すでに習慣化されている行動に紐づけるのが確実です。
ハードルが高い行動は、実行される前に先延ばしにされやすくなります。「スクワット5回」のように、迷わずできる小ささにとどめます。
一気に5個も6個もルールを作ると、逆にどれも定着しません。まずは1〜2個から始めて、生活に馴染んだら少しずつ増やしていくのがおすすめです。
伴走コースでの活用
プレミアム伴走コースでは、週1回の運動指導・毎日の食事チェックの中で、こうしたif-thenルールを一人ひとりの生活パターンに合わせて一緒に設計しています。
「決意」ではなく「仕組み」で続けられる形を、日常の中に落とし込んでいくイメージです。
まとめ
- 習慣が続かないのは意志の弱さではなく、「いつやるか」が決まっていないことが原因になりやすい
- if-thenルールは「もし〇〇が起きたら、△△をする」と、きっかけと行動をあらかじめセットで決めておく手法
- 心理学者ゴルヴィツァー氏らの「実行意図」研究に基づく、行動科学で効果が報告されている方法
- ifは既存の習慣に紐づけ、thenは数秒〜数十秒で終わる小さな行動にするのがコツ
- まずは1〜2個から始めて、生活に馴染んだら少しずつ増やしていく
